企業向けソフトもアプリにしろ、さもなければ死ぬ

http://techcrunch.com/2014/07/12/software-entrepreneurs-must-go-mobile-first-or-die/ の翻訳記事。

記事のタイトルを日本語にすると「ソフトウェアの起業家はモバイルファーストに進むか死ぬかだ」と、エンタープライズ向けのソフトウェアを開発しているスタートアップもモバイルファーストでないと生き残れないと主張している。


iPhoneがはじめて登場した7年前(!)、スマートフォンは変わり種であった。 それが今ではほとんどの人々にとってコンピュータを使うといえばスマートフォンを操作することを指す。 昨年の暮のNielsenの調査によると、アメリカ人はモバイルデバイスの操作に34時間を一月に費やし、コンピュータを通じてWebにアクセスする、月に27時間よりも多い。

このモバイルファーストの考え方は企業にも深く浸透してきた。 知識労働者の95%もの人々がスマートフォンを保有しており、すべての種類のタスク、eメールから、会議資料用のドキュメントの共有や管理、それにビデオ会議といったものにはまず、スマートフォンを使ってとりかかる。

スマートフォンタブレットは、建設、小売、製造、ヘルスケア、不動産、教育、法曹、車両管理など様々な業界全体に急速に広まっていった。 現場作業員も専門的に特化しているアプリ(レンタカーの店員から家を建てる大工さんまで)をタスクを完了させるために使っていることにも気づくはずだ。

Salesforce.com のCEOであるMarc Benioff が最近テクノロジーのカンファレンスでこんな発言をした。 "最近じゃ自分の仕事は自分の電話で行っている。数年前にはこんなこと想像できなかった。"

そのため、エンタープライズ向けソフトウェアの起業家たちは、このプラットフォームシフトは製品のロードマップやデザイン、雇用、市場参入戦略と価格設定といった大規模な波及効果を持っている。言い換えると、それはすべてにインパクトを与えているということだ。

もし、エンタープライズ向けのソフトウェア開発会社を設立しようとしているなら、モバイルは製品戦略のコアに据えるべきだ。付け足しとかアドオンではだめだ。 そして、エレガントで使い勝手のいいモバイルアプリを作らなきゃならない。 なぜなら、従業員や一般消費者はモバイルアプリをモバイルウェブよりも圧倒的に好むからだ。 アメリカのスマートフォンユーザーのモバイルアプリで86%の時間を過ごし、モバイルブラウザは14%でしかない。

うまくいっているモバイルに特化したエンタープライズ向けのスタートアップの例としてClariというCRMソフトをつくっている会社がある。 右の綺麗で見栄えのいいスクリーンショットはClari Daily Brief と呼ばれるスマートフォンを自分の主要なコンピューティングデバイスにしている営業担当者が外周先からチェックするのに適するように完璧につくっいる。

さらにPagerDuty という会社がある。ITの専門会社に潜在的な問題をSMSやemailを通じてアラートを送るというサービスを行っている。

また、その市場にはCoTap という会社があり、職場チーム向けにモバイルファーストなメッセージシステムを提供する-ビジネス向けのWhatsAppといったところだ。

これらの会社や他の会社はモバイルファーストな製品やモバイルを中心に据えた企業文化を構築しようとするときに、起業家が心に留めておくべきいくつかの重要な教訓を説明してくれる。

製品や市場に適した一つのプラットフォームに絞る

iOSAndroidはまったく違った環境をもつため、リソースに制約のある起業家はどちらかを選択する必要がある。

自分の最終顧客が使うであろうデバイスの種類を考慮して、各プラットフォームの長所と短所を考えるべきだ。(例えば、Androidはすぐにリリース/反復(アップデートのこと?)するのが簡単なので製品/市場にフィットさせる期間が短くなる。一方iOSはマネタイズが簡単だ。)

ひとたび、プラットフォームを選択したら…

そのプラットフォーム専門の開発者を雇う

iOSAndroidそれぞれ3〜4人のエンジニア/デザイナーをの専門チームがそれぞれ必要になる。 これらの人々をみつけるのは難しいが、選択肢はない。 A+なモバイルアプリをつくるには、iOSAndroidのどちらかに特化した専門のチームが必要なのだ。

デザイン、デザイン、デザイン

自分のアプリが価値のあるものだと説得するための時間はたったの数分間しかない。 もしユーザーが使い方を理解するのに苦労して2〜3分を費やすなら、よい印象はもたれない可能性が高い。 素晴らしいモバイルアプリはユーザーがタップした最初の1分から直感的だ。 しかし、そんなふうにエレガントに何かをデザインするのはとんでもなく難しい。 あなたには素晴らしいデザイナーが必要だ。 そして、最初に雇うメンバーひとりは経験の積んだデザイナーであること、理想を言えばスタートアップのメンバーであることを確認しておこう。 それと、3〜5人のエンジニアにつき1人のデザイナーを雇うことを目指すのもだ。

ワークフローとUXに与える影響について考える

これは明白なことだが、スマートフォンタブレットの操作とキーボードやマウスを操作するのとはとんでもなく違う。 クリックやテキスト入力の代わりに-何十年も企業のデスクトップアプリケーションの標準だった-タップやスワイプに基づいたモバイルワークフローをデザインする必要がある。 あなたの考えかた次第だが、これは恐怖にも開放にもなりうる。 このデザインの制約を受け入れれば、その可能性に驚くでしょう。

つくりすぎるな

モバイルアプリで成功する別のキーはシンプルに保つことだ。 あまりもに多すぎる機能を盛り込まないようにして、3から4スワイプ/タップ以内でユーザーが実際の価値を手に入れられるように確認しよう。 ほとんどの現職のソフトウェアベンダーはこのことに気づけない。 2000年代のソフトウェア戦略では、あまりに多くの機能を詰め込んでしまい、誇大化した使いにくい製品を得ることになってしまった。この罠にかかってはいけない。シンプルさを保て。

アプリがスタンドアロンなのかサポートの役割なのか決める

人々がスマートフォンをPCよりも強く好むからという理由だけで、コンピュータを必要とするタスクワークが存在しなくなったということにはならない。 Accompani のようなスタートアップはこのバランスを正しくとっている。 関係管理ソフトウェアをつくる会社は、顧客のモバイルデバイスが常に稼働しているユースケースを満たすには、バッチ処理型のタスク-受信箱をきれいにしたり会議の次の日の準備(?)-をPCだろうとタブレットだろうと実行しなければならない。

結局、プログラミング、グラフィックデザイン、ライティング、プレゼン資料作成、そのたの仕事はいまだなお、キーボードと大きな画面をつかって行われている。

自分のモバイル用の企業向けアプリが解決するタスクが、決してコンピュータを必要としないのか、今までは必要だったのか、これから必要なのかを把握しておくこと。 それと、デスクトップアプリケーションと連携して動作する必要があるかどうかも把握すること。 モバイル・アプリのインターフェイスデザインはモバイルとデスクトップの同期を取る必要があるかどうかの違いに大きく依存することになる。

もしモバイルファーストなビジネスとして会社をスタートさせていないとしても、重要な方向転換を行う時間はまだある。Facebookはそれをやった

消費者をデスクトップベースのウェブサイトからモバイルファーストなアプリに移動させてしまい、このプロセスにおいて収入の流れをすっかり変えてしまった。 もしFacebookのような巨大な企業がモバイルに回れ右できたなら、もっと小さいあなたの会社もまたできるはずだ。

あなたのソフトウェアにおけるユーザーの相互作用についての古い考えは捨てさってしまいなさい。 そして、合理化された、エレガントで効率的なモバイルアプリの設計にすべてのエネルギーを注ぐべきだ。 それは簡単ではないがやるべきことだ。 さもなければ、あなたの企業向けソフトウェア会社は過ぎ去りしデスクトップ時代の遺物としてゆっくりと消えていくだろう。