フォードVSフェラーリ

観賞する前は米国が欧州に抱くコンプレックスを圧倒的物量によって勝利を収めてアメリカ万歳!アメリカ万歳!な映画なんだろうと妄想していたが全然違った。

このフォードVSフェラーリのテーマは組織と個人であり、それはあくまでフォード内の組織内で描かれる。 フェラーリはストーリーのメインには置かれず、フォード2世のコンプレックスを刺激するための触媒として機能しているだけで影が薄い。 クライマックスのレースではフェラーリのドライバーにセリフが全然なくて笑ってしまった。 ライバルと言うよりただのモブ悪役で物足りない。

ケン・マイルズとキャロル・シェルビーが本作の主役で 人付き合いは得意ではないが実力はあり、勝利への追求心は誰にも負けないといった個人的には大好きなキャラクターだった。

それにしてもケン・マイルズの演じるクリスチャン・ベールはいい俳優である。

彼が演じる特定の能力に秀でてはいるものの社会性に欠けていて人生あんまりうまくいってないキャラクターがわたしは大好きだ。

映画「マネー・ショート」ではアスペルガー症候群で片目の元外科医のヘッジファンドマネージャーである マイケル・バーリを演じていてこれまた実に共感が持てるキャラクターになっている。

話をフォードVSフェラーリに戻すと気になった点がひとつだけあってマット・デイモン演じるシェルビーがレース中にケン・マイルズに指示をするシーン。 立場的には中間管理職であるはずのシェルビーの発言は個人的には責任を放棄していると受け止めてしまいモヤッとした。 その後のシェルビーの行動も急に大人になった感あって今までの意地はなんだったのよとなってしまった。 史実をドラマにしているせいもあるだろうがそのあたりがしっくりこなかったな、でも気になったのはそこだけ。

全体的にはいい映画だけどフォードは嫌いになったそんな映画です。