NHKスペシャル「ヒューマン なぜ人間になれたのか」の取材記をKindleで読んだ
NHKの取材記
2012年に放送されたNHKスペシャル「ヒューマン なぜ人間になれたのか」の取材記がKindle版でセールしてたので読んでみたら思った以上に面白かった。
テレビ無いし受信料払ってないので放送は視聴していないのだがこれだけでも十二分に楽しめる内容になっている。
人類とはなにかという壮大なテーマで色々と盛りだくさんなのだが、ここでは人間とチンパンジーの違い・共通点についてまとめてみた。
人類とチンパンジーの違い
その一つが助け合うかどうかだ。
人間は困っている人がいれば相手が求めずとも助ける行動に出る。チンパンジーはそうではない。
このような実験を行った。 隣り合う2つのブースにそれぞれチンパンジーを入れる。 片方にはストローを使わなければ飲めない容器を置き、もう片方にはステッキを使わなければ引き寄せられないジュースの容器を置いておく。 また、協力しなければジュースが飲めないよう互い違いにストローとステッキも配置する。
すると、どうなったか。チンパンジーは全体の59%において道具を受け渡した(少ないな)、ただし受け渡しの74.7%は相手の要求に応じる形で起こったのだ。
"「チンパンジーの利他行動には、相手からの要求が重要なようなんです。ヒトは他人が困っているのを見ると、頼まれなくても自ら進んで助けることがありますが、チンパンジーは相手からの要求があって初めて助けることが多い。" http://t.co/2gZz6SYbTt
— 極めて素敵な好青年 (@_snowlong) 2015, 4月 24
チンパンジーは助け合わない代わりに見返りも求めない。
"ところが、私たちから見て、もっとも大きな違和感はそのあとだった。相手に借りた道具でジュースをせしめたチンパンジーはおいしそうに自分だけで飲み干してしまったのだ。" http://t.co/fdSUX6uY4v
— 極めて素敵な好青年 (@_snowlong) 2015, 4月 24
"しかし、実際には、ジュースをお礼に分けるという例は一度も観察されなかったという。しかも、その後も、道具の貸し借りはつづいた。「ジュースを分けてくれないんなら、もう道具は貸さない」といわんばかりに、拒否したチンパンジー... http://t.co/q8kr48AF8K
— 極めて素敵な好青年 (@_snowlong) 2015, 4月 24
一方、人間は分け与えるという行動パターンがインプットされている。
"「どんな文化でも人間は、分かち合う環境で育ちます。分かち合いの精神が自然に身につき実行できます。児童心理学の研究から次のようなことが分かっています。人間の乳児の最初の行動のひとつは物を拾って口のなかに入れることです。... http://t.co/VUCRUK0KnK
— 極めて素敵な好青年 (@_snowlong) 2015, 4月 24
肝心なところが切れてしまっている、続きはこうだ。
次の行動は拾ったものをほかの人にあげることです」 それは世界共通だという。米国でも、欧州でも、日本でも、乳児は同じような本能的な行動パターンを示すという。
面白いのはこの「分け与える」という行為を行わないチンパンジーに関して「えーなんで」という印象を筆者や僕が抱いたことだ。 「いままで意識したこともない、人間の独自性が浮かび上がった瞬間だった。」とあるがまさにその通りだ。 チンパンジーは人類と99%同じ遺伝子を持つのだが、その1%の違いがここなのかと思わず唸ってしまった。
おそらく、「分け与える」という行為は森から草原に進出後に獲得したものではなかろうか。 草原に出てきた人類にとってそこは森とは違いあまりにも危険な場所だったのだろう。そんな環境の中、助けあうという性質がないものは生き残れなかったのではないか。
人類とチンパンジーの共通点
他の集団に対する攻撃性の高さだ。
"興味深いことは、オスが血縁者や親類のほかのオスと一緒に集団生活をして、時折襲撃したり、殺すために隣接集団の領土を侵略したりすることです。それをする生き物は、私たちの分かっている範囲ではチンパンジーとヒトの2種類だけです。" http://t.co/gcQrVB4moo
— 極めて素敵な好青年 (@_snowlong) 2015, 4月 24
食べるために殺すとか生殖のために戦うのではなく、ただ攻撃するために攻撃し相手を傷つけときには殺してしまうというのは確かにほかの動物では見られない行動パターンだ(イルカはどうだろう)。
こうして人類は攻撃性と利他性という相反する性質を持つことになった。
その結果、
"分かったのは、私たちの脳に潜む驚くべき二面性だ。私たちの脳は、不公正な人、つまりは不愉快な、嫌な人の痛みを見たときに、快感を感じるのである。" http://t.co/SAkOTMYZg7
— 極めて素敵な好青年 (@_snowlong) 2015, 4月 24
その結果、人類は他者を敵か味方かで判断するという二元論的思考を手に入れてしまう。 敵に対してはどんなに相手が苦しもうとも共感することがない。 歴史を紐とけば虐殺、拷問、人間ハンティング、天然痘の毛布をプレゼントもうなんでもありの魑魅魍魎の世界が広がる。
"「公正な人の痛みを見たときに強く活動し、不公正で利己的な人の痛みを見たときにはまったくといってよいほど活動がありませんでした。すなわち、過去に自分に対して利己的な態度を取った者の痛みを見るとき、共感に関わる脳の活性化... http://t.co/WZNOwAJ9s4
— 極めて素敵な好青年 (@_snowlong) 2015, 4月 24
さらに進化は続く
チンパンジーと袂を分かち、ホモ・サピエンスとして出アフリカしネアンデルタール人などの亜種を取り込みながら移動を続け地球上の隅から隅まで到達した。 そのなかで定住化、都市化、農業、文字の発明などを行い「文明」を高めてきた。 そして我々はどうあるべきなのかみたいに話は続くのだが興味あれば読んでみてください。
全体的な感想としては人間、人間の進化ってめちゃくちゃ不完全だなと。 自分自身、都市に住んでるけど都市に順応できてるのかって言うと怪しいし、他者と協力して何かをするというのもそんなに得意でないしどちらかと言うとチンパンジー的な「わたしはわたし、あんたはあんた」的な方がいいなとか思ってたり、分業するより自分で全部やったほうが楽しいよねとか考えたり(全部自分でやろうとすると確実に文明が衰退するそうです、てへ)してなんかまっとうに進化できてなくねとか考えたりしてちょっと凹んだりしました。
まあ、それでも何が生き残るかわからないので自分のような人間もいていいんじゃないかなと言い聞かせてみたりして生きていこうと思いました。